[あの事件が明るみに出たときはてんやわんやの大騒ぎだった。ゴシップ誌はあることないこと書きたて、取材という名のハゲタカが学院を毎日のように襲ってきた。
だが、3ヶ月も経つと人々の噂になることもなくなり、いつもの静かで平和な学園生活が戻ってきた。]
それまで私は、ずっと妻と娘の敵を討つことばかり考えて生きてきた。それしか考えられなかった。でも、あの事件がきっかけで少し考えが変わった気がする。あの子が、文月が、そんな人生を終わりにして欲しいと願ってくれたような気がして。
こうしてこの子たちに食事を作ったり世話をしていくだけの毎日も悪くはないのかもしれない。そう思うと、心の重荷が少しだけ軽くなった気がした。
[今日は卒業式。たくさんの思い出と一緒に3年生達は学び舎から巣立っていく。砧が優しく持つ写真の文月は少し笑っていた。]
End.12-a/旅立ち