渡したかったけど宛先のなかった短歌(一部) 2/2
纏いつくコーダ振り切って飛びこめば水の中までゆうぐれだった
綻びる背中の縫い目みずからの内にあるもののみを怖れる
首の傷かすかに疼く血の色を知られているというよろこびに/松野志保『Too Young To Die』
穏やかな
年齢迎えたし病なくよき友あればほかは……いえない/『長夜集』小高賢
比喩として降るだけ降れよあす朝のひかりは降雪量の比例だ/吉田隼人『忘却のための試論』
逆さまにメニュー開いて差し出せばあす海に降る雨のあかるさ
嘘をきらう君と私はいっしんにスノードームに雪を降らせる
/服部真理子『行け広野へと』
うしろゆび指されることの不合理を語る瞳に宿る狐火/小佐野 彈『メタリック』
ぼくはいま、以下につらなる鮮明な述語なくしてたつ夜の虹/『永遠青天症』荻原裕幸
#硝子の欠片