[青年は屋敷から一歩、外へ踏み出した]
んんーここは何処だっけ? あれ、僕は何してたんだっけ。
なんか凄く痛くて、怖い思いをした気がするなぁ……そうだそうだ、真っ暗な部屋で、真っ赤な眼と真っ白な牙を見たよ、僕。
うぅん……後はわかんないや、まぁいっかぁ。
[物音一つしない森へ向かい、真っ直ぐに進んでいく。月はあの日の燃えるような輝きを失い、さらさらと流れる川に力なく横たわっていた]
あはっ……眩しぃなぁ。大っきいお月様だ。とってもきれい、ぴかぴかぁって。
先生に見せたいなぁ……先生、先生♪
[開ききった瞳は忙しなく動き、無意識に溢れた涙がさらに視界を歪ませた。強く吹き込む風が、彼を前へ前へと押し出した。青年は足元の月に気付かない]
あれっ!? もしかして先生っ? わぁっ、迎えに来てくれたんですねぇ!!
先生っ♪ 今すぐ行きます、