「だから、お兄さん。皆を助けてあげて。だって、お兄さんが本物の霊能力者なんでしょ?」
「―――――――…」
青年は答えない。彼の表情は、月の光の影に隠れた。
「俺、実はまだ、お兄さんが狼だったらどうしよって思ってるけど…でも、信じてるから。だから――――」
「無理だ」
青年が少年の言葉を遮る。
少年は小さく、え、と声を漏らした。
その瞬間。
少年の体は、青年によって絞首台から突き飛ばされる。
世界が、落ちて。
そして、最期の瞬間。少年の目に映ったのは。
紅く、赤く、輝く月と…
青年の、笑っ、た――…
――――――――ガシャン。……キィ―…キィ…