515 喫茶硝子屋プロデュース 透明と編纂
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手品師Ｎ・Ｂ ニール
「ソロソロオヤスミの時間
そうすればマタ夢を見れるカラ
夢が見れなくなった時
寂しくなったら、ニールクンを呼ぶんダヨ
そうすれば。いつでもキミ達の為だけのワルゥイ夢を見させてあげるから」
ニールクンはそう言って、夜色の帳を拡げる
「３・２・１！」
夜はもうすぐそこに来て
また、硝子が光る陽の光が昇るまでは、暗闇が続くのだろう
でも夜には。灯りを求めた誰か達の光が、堺を朧に集まって来る
そんな混ざった時がまた、来るまで
「サヨウナラ！
ニールクンは、悪い子の君達の傍にいるかラネ」
手品師Ｎ・Ｂ ニール
手品師を、夜の夢が飲み込んで
そこには、ふと起きた時に、夢を見ていたという記憶だけが残っている事があるように
夢を見せる手品師がいた、と言う事だけが残っているのでした
手品師Ｎ・Ｂ ニール
──────
『ウィステリア』は、もう誰もが夢を見ている街を歩く
冷えて来てしまった吐息
悪い子と呼ばれた子達は、火に当っていても寒さは消えない
幸せな夢は、マッチ売りの少女を死なせた
送り物を届けた狐は、雪の中で銃に撃たれた
「そのままでいいんだってだって
消えないんだよ寒いからだって」
奪った財布は懐を暖めてはくれないし
神に捧げる祈りはパンの一つもくれやしない
神様の子どもは、触れただけでパンでも葡萄酒だって産み出せるのに
「母はあるがままの君達を見捨て
父は君達を変えようと谷底に突き落す」
手品師Ｎ・Ｂ ニール
心に根差した夢さえ見れない空白を、何で埋めたら良い？
何処の誰が、一日を生きるに精一杯の、犬を可愛がる老婆を殺した。
一日を生きるのに精一杯の、誰にも愛された事の無い男に夢見て良いと言えるだろうか？
彼等はきっと、夢見る事無く消えてしまえと願われる
たった一人で覚めずの眠りで冷めてしまえと願われる
それが沢山の寓話にとっての夢ならば
気まぐれの様に。悪い子の為だけの、良い夢達にとっての悪い夢が旅をしたって良いでしょう？
手品師Ｎ・Ｂ ニール
それは遠い遠い道のりだ
けれど。ウィステリアは、きっときっと離さない
どんな悪い子であったって。
夢見る事から、離れないでいるだろうから
「だから安心して
悪い子でいていいんだよ
なんて、ね」
さようなら。このお話の悪い子達
またいつか。悪い事をしたくなったら、夢を見て
紙一重 アディントン
[ 聞きたいとあれだけ乞うたのに、
知るための言葉を何ひとつ知らなったから。
散歩のあいだ、ただ黙って隣を歩いていた。
まだこれから伸びるはずの背。
少年という人間の肩にかかる重みを知らないまま。
───伸びていく影がふたつ。
橙と夜色の混じり始めた背景に添えられていた。 ]
紙一重 アディントン
[ 過去が遺物になるように、
今日がただ文字の羅列となり果てる前に、
物語の結末を前に足掻こうとするなにか、たとえがたいもの。胸が騒ぐ意味、その答えを見つけられないで、いた。]
紙一重 アディントン
……腹減ったら、いつでもきて。
[ ずっと荒れたままの手でペンを握った。
村人と書かれたカードに綴る文字。
住む場所を書いたけれど、読めるのか、伝わるかも分からない。
聞きたいことの対価に差し出せるものは、自分の手でつくりあげる料理ひとつ。
変わり映えのない日々に帰る前に振り絞った声が、どうか届きますように。 **]
紙一重 アディントン
[ 気の向くままに借りていたひとりしずかに厨房を磨き上げる。
思えば今日まで誰にもこの仕事を譲ったことがないことに気付く。
自分の居場所、生きがいになる場所をだれにも侵食されたくなかった 筈で。 ]
紙一重 アディントン
[ ───ふしぎな心持ちだ。
赤の他人に厨房を使うことを許すシロを心底理解できないと思っていた。 ]
紙一重 アディントン
[ "痛い" そう思った気持ちのやり場がない。
隙間風が吹いている、ような。
それがどこであるかは理解していて、口にするのを躊躇った。傷口から血が溢れるような痛みをいま、感じている。
───心と体は一体なにで繋がっているのだろう。
いつのまにか、ふたつのあいだにできた余白。
それを埋めるすべを持たないまま、ふらり、 ふらりと何かに惹かれるように店を出て、歩き出した。 ]
紙一重 アディントン
[ 鶏と牛の鳴く声と、独特の藁の匂い。
売り物の魚が、籠にはいって運ばれていく。
布に覆い隠されて、だれかの空腹を満たすまで行儀よく並んでいる野菜たち。
日の出のかすかな温もりと、
だれかのために作る朝餉の香り。
───瞳に映る風景に、いま、欲しい色がない。
明け始めた、空を見上げる。
同じものを見ていても、同じものが見えなくても。
正しいと、自分が選んで決めること。世界はそうやって回っている。
今日という世界がひとつ綴じられる頃、最後の頁に打たれる句点がひとつ。それが滲むように霞み始めるのと同時にひとりの男が街から姿を消し、手が荒れるばかりの日常へと帰っていった。 **]
神託を告げる者 ジェラルド
[「自分は誰かを救う英雄になるのだ」と教えられてきた。そう信じてきた。
それでも外に出て知った。この世界は美しい。きっと英雄など必要としていなくとも、それぞれが立って歩き生きていけるのではないか。
ゲームの中の、小さな村も救えなかった自分に、一体何が出来るのだろう。
それでも店の中にいる人々の、店主の、精一杯楽しんだからこその、充足感を肌で感じ、自然とため息が出る。
その時、こちらへと歩いてくる"少女"を見つけた。]
神託を告げる者 ジェラルド
>>152
[君がまだ全て思い出せていないことはすぐに理解した。
ああそれでも、その一言だけで。]
…ベアト、見ていてくれてありがとう。
ゲームが終わったら、お話しようって言ってたよね？今度は、君とたくさん話したいな。
僕のこともたくさん伝えたいし…君のことも、教えてほしい。君がどんな風に過ごしていたのか、そして、この街のことも。
[この街のことも、君のことも、シラナイセカイはまだ広がっている。
これからどうするのか、まだ分からないけれど。
まずは、ミルクとシュガーたっぷりの、コーヒーと一緒に。
これからのことを一緒に話そう。
深淵はようこそと引き擦り込んだ。
でも、君の元へ辿り着けたから。
世界の英雄になれなくとも、君のヒーローとなれたなら。
僕はここで、君に告げる。
"HELLO" 大切な僕のきょうだい。]
【P】 『硝子屋』店主 シロ
*******
日向を嫌う研究者の男のもとに来客が訪れた。
肩書、風体、なにをとっても統一性が見いだせない。
もちろん男と面識もない。
口にするのは不思議な話。
というのも、男が不器用ながらに
心を注いでいた"少女"と会っていた、という。
一週間。それ以上の時間を共に過ごしたという。
あり得ない話だ。何故ならその少女は十年以上を
閉じ込められて過ごし、今もそこにいるはずだからだ。
全ての話を聞いた男は、なにも出来ない自分の代わりに
知る限りの情報と知識を託して来客を見送った。
*******
【P】 『硝子屋』店主 シロ
……よく似たゲームがあるんだよ。
また別の場所。文字伝いにそれを知った時そんなことを思った。
失った夢のこと。欠片を手繰り寄せていくこと。
不思議な話だった。
だから、見てみたくなった。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを見ている。
過去を紐解こうとするとき、
きっと過去も手を伸ばしてくれる。
数多のページの中から探しものを辿ろうとする時、
大好きなコーヒーのにおいと言葉の海の中に、確かに
その顔が見える気がする。
くちびるからこぼれる歌のように、
知りもしなかった名前を呼ぶ。
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