《ボレロには程遠い》
「毎度お騒がせ致します。お馴染みの廃品回収車でございます。皆様のご家庭でご不要になりました、古新聞・古雑誌・ぼろ・古着・不良在庫・不良債権・不良親族・給料泥棒・役員報酬泥棒・赤字店舗などはございませんか?ございましたらご多少に拘わらずお気軽にお申し付けください」
塗装ひび割れが目立つ観覧車から降りてすぐ乗ってを無言で続ける三十代の男女
メリーゴーランドで独り嬌声を上げる派手な女と料金を払う家族には見えない初老の紳士
スケートボードを放り出して煙草を吹かす少年少女を見えぬ振りする吉田先輩
資源ごみ入れに腕を突っ込みラベルを剥がして袋に収める年齢不詳の男から目を逸らす山本先輩
「…ご不要になりました、古新聞・古雑誌・ぼろ・古着・不良在庫・不良債権・不良親族・給料泥棒・役員報酬泥棒・赤字店舗などは…」
繰り返す放送が段々と大きくなる
空はくすんで空気は乾ききっている
「毎度お騒がせ致します。お馴染みの」
廃品回収車が10台、20台、30台、後から五トントラックとクレーン車
上司からは何も聞いていない
雨が降りそうですよと降りて来た男女に言う
曇天に目を泳がせる男
あと一回だけ、と女