《好天な朝》
「それマザーグースやん!」
「違うってファーザーグースやって!」
バスが揺れる
つり革を握り直す
視界の端で言い合いをしている通学中の男子小学生
「ほんまやって!お父さん言うたし!」
「それお前の父ちゃんおかしいんやん!」
「絶対ほんまやし!お父さん嘘つかんし!」
バリアフリーバスの重心は低いが振動はある
友人の座席の取っ手を掴みながら
少年は友人と溝を深めていく
「ほんまやし!先生もファーザーグース言うてたって!」
「先生が言う訳ないやん!嘘つくなお前!」
ここにいない人の名前を出すたびに独りになる少年
<次、停まります>
口論を続けながら定期を出し、降りて行く
自分の降車駅を確認する
「十五分前集合が常識」の課長と「三十分分前がマナー」の次長
どちらに合わせるか思案の末に両方無視すると決めている