《過剰防衛反応》
「アレルギー性ぴえんですね」
ブリッジに中指をかけ、眼鏡の位置を調整する担当医師。
視線の先、検査結果が書かれているらしい紙。
四十半ばも過ぎた中年には、言い間違いにしか聞こえなかった。
くしゃみ鼻水鼻づまり、熱はないので風邪ではない。
陽も穏やかな時節を鑑み、ああ、ついに花粉症になってしまったかぁなどと考えていたら、これである。
咳払いがひとつ。
「アレルギー性ぴえん、ですよ」
理解不能な専門用語と咳払いを交互に並び立てられ、お薬出しておきますねの声で話が終わったことを理解した。
薬があるのか。薬でなんとかなるものだったのか。
こと、健康には自負があった。
耐性対策対症療法、自己診断には自信があった。
アレはヤブなのかもしれない。何にしろ、咳払いが多かった。
内用薬と書かれた袋をゴミ箱に捨て、テレビをつければ海外ドラマがやっていた。
ジャック・バウアーの渋い咳払いが聞こえる。