[突然変異で生まれてくるキチェ・サージャリアンを、喜ぶ家庭も多い。国から援助金は出るし、名誉なことだと羨望の眼差しを向けられることも多いと聞く。
けれど実際、身包みを剥がされ、狭い空間にキチェを持つものだけを閉じ込めて、同じ教育、同じ価値観を植え付けるなんて、異常だと思った。
キチェを捨てた両親を持つからこそ、キチェなど、持っていても辛いだけだと教えられてるものだと思ったから。彼女の言葉は、意外だった。]
私は、
————…キチェを、焦がれるほど望んだこともあったが…
少なくともキチェを持つ、持たないという理由で
出来損ないかどうかなんて、決まらないと思うぞ。
ましてや君は今やりっぱな医療従事者で。人の役に立ち、選ばれ、ここにいるんだ。
腹でも下した日には、サージャリムよかよっぽど女神に見えると思う。
[多分私はそう思う。真顔でそんなことを告げたら、宇宙服の上からその肩に手をやって]
頼りにしている。
[に、と口角を上げ、またな、と再び廊下を歩き出した。*]