農家 チェスワフ

― 某日:星屑の庭 ―

[親友と会う約束をする以外では、
ここに来るのは殆ど夜だった。

距離が遠くても、優しくしてくれる"家族"を、
無碍に突き放す事は出来ず、昼間は愛想笑いの繰り返し。
泣かせたくは、無かった。これもまた、身勝手な我儘。

土に植えたのは麦ではなく、ペパーミントや、カモミール。
簡単に育てられる"薬草"だった。
清涼ある薫りが、今ここにはいないもう一人の"親友"の、
使ってくれたクスリの匂いと似ているから。

作物を育てている割に専門外だったので、
図鑑に載っていて、彼女がよく抱えていた
薬草が欲しいと言ったら、危険すぎると断られた。

セニリタという花は、存在しないらしい。蜜まみれになる事も、当分、ないのだろうか。*]