― 或る日のお話:赤い花の少女 ―
[何時ものように、傷薬を貰いに小麦粉片手に訪れたチェスワフを見送った日。
今日の仕事も順調だなぁ、なんて思いながら紅茶を飲んでいると。
コンコン
小さなノックの音がした。少し焦りも感じるそのノックに、すぐさま立ち上がり扉を静かに開ける。]
あら、可愛いお客さん…だけど、うん、大丈夫。
…落ち着いて。
[泣きながら何かを訴える少女がそこに立っていた。目を真っ赤にして、落ち着かない様子で嗚咽をもらしていて。なかなか言葉が出せずにいる。
恐らく急を要するのだろうが、ひとまず彼女を落ち着かせたい。
ニッコリと笑うと、膝を折り同じ目線になる。
ゆっくりと背中をさすり、嗚咽が収まるまで『もう大丈夫』そう唱えた。]