― 麦畑への道で ―
[目に入った友人は、想像以上に落ち着いた様子で。>>40
何事もなかったかのような様相の彼が、今は心強く感じる事はできなかった。
むしろ、どこか痛々しく。
友人はそのまま、ニコリと笑う顔でヘクターの名前を口にする。]
会え…なかった。
…ヘクターも、居なくなってしまって…。
[思わずスッと目を逸らし、眉根を寄せる。
研究所の様子を教えると、予想はしていた…聞きたくなかった事が友人の口から告げられた。
明るい調子で話す友人に、自分は笑うことができなかった。
性質の悪い悪戯ですね、とでも言いたげな様子は、非日常の中に無理やり日常を持ち込まれたようで
そのアンバランスさに、顔を顰める。]