[でも、ある日。
李がいっぱい生ってる場所を見つけたって、街の子が言うから。
いつものようにそっとお屋敷を抜け出したの。
小高い丘をこえた先、茂みの一角に大きな李の木が生えてて。わたしたちは手も口のまわりも李の汁でベタベタに汚しながら、笑ってふざけあっていたわ。
そしたら、ばあやがやってきたの。
わたしをさがしに来たんだって。
ばあやに叱られながら、わたしはお屋敷に帰った。
そしたらね、ドーン!って、すごい音がして。
丘の上から見たら、街が。お屋敷が。お城が。
真っ暗な星空は真っ赤に染まって。
ばあやが話してくれた、「夜明け」みたいに怖かった。]