[座ったまま左右を見回せば、まだブラックはいただろうか。
その姿が見えても見えなくても、ぼやけた視界よりは芳ばしい香りのほうが優先された。>>55]
……餡。餡子の香りがする。
[ひくりと鼻を動かしていると、後ろからもう一度先程と同じ感触が後頭部に。
載せたのはうなぎパイだろう。
載せたのは柊だろう。
バッ! と振り返ってから彼の手を跳ね除けようとする。]
あんたなぁっ……!
怪盗からの差し入れのほほん配るんじゃねぇよ!
[常識的に考えればもっともな突っ込みだったが、既に周囲でうなぎパイを食べている同期や先輩たちは、不思議なものを見る目を向けてきたことだろう。]