[ホテルへ向かいながら。ポケットの中、曲がったヘアピンに触れる。こっそりお守り代わりにしていたのは、レーティスには内緒だ。生きて帰れるのはこれのお陰かも――なんて。]借りたヘアピン、ピッキングするのに曲げちゃったから弁償する。あとで一緒に選びに行ってくれるかな。こういうのがどこに売ってるかさえ知らないから。ほんとはペアピンより渡したいものがあるんだけどさ……っ。[最後の言葉は酷い早口で、言い切った後俯いた。少しだけ髪の隙間から見える耳が、赤みを帯びていたかもしれない。]*