― 星の降る夜 ―
[この街には朝がなければ、夕もない。
あるのは星を抱いた夜だけで、それでも人は日常を送る。
研究所が正しいサイクルでの生活を推奨しているのもあるが、
何故か人の体と言うものは、月が頂点に辿り着くころに眠くなる。
昼夜がなければ、何時休息を得ても良いはずなのに。
それは人や獣の身体に刻まれた遠い記憶だと、
知り合いの夢詠みに聞いたことがある。
かつて朝と夜が明確に分かれていた頃の名残らしい。
人々が忘れたとすら忘れてしまった遥かなる夜明け。
今以てその記憶に左右される因子を持つが故、
今宵も羽毛の枕を抱いて、ぐっすりと安眠貪る身は、
空を数多に流星群よりも、深夜の騒音に飛び起きた。>>36]