《天地無用》
そっぽを向いて右ならえ。
狭間に聞こえているのは、
ひかりが目を覚まそうと背骨をポキポキと鳴らす音と、モルモットがケージをかじっている音だけだ。
白のパーカーワンピースの襟が空を裂き、裾が薙ぎ払い、黒のベルトが鞭を打つ(傷をつけるのは簡単だった)。
私の足と同じ大きさまで育てた齧歯目くんよ。
この身にあたる風がどの程度のものか教えてくれ。いつか辿り着くための道程に灯りをつけるために。
さしあたって動機と呼べるのはこれくらいだ。ケージを覗けば、鋭い前歯に威嚇された。
PAで買ったニンジンを差し出し、120円のココアを口に含む。
余ったダンボールにケージを入れる。
3月の夜明けはまだ寒い。
傷つくのが楽なら、治るのも簡単じゃないとつり合わないじゃないか。