[彼女は語る、切々と。夢を見たの、と。
それは背筋が凍えるほど恐い夢だった。
天の機嫌や、豊穣を教えてくれる天啓ではない。
夜空が真っ黒な口をポカリとあけて、人々を飲み込んでしまう夢。
あれがきっと、御伽噺に出てくる夜明けを招く怪物よ。と、
彼女は恐怖を押さえつけるように、自らの身を抱きしめた。
星蝕は夜明けを誘い、滅びと終わりを告げるもの。
良いものの筈がない、ねぇ如何したら良いの。
夢詠みであることを除けば、彼女は唯の少女だ。
自身は落ち着かせるよう肩を撫ぜ、続きを促した。
当然、店内に居る二人にも聞かせるように。]