中々美しいだろう? あれは、月下美人と言う花を模しているのだが、 その花言葉が、また洒落ていてね―――?[友との待ち合わせ場所へと進む最中、蒼い薔薇と対成す奇跡の花を論じる講釈。だが、不意に言葉を止めたのは、視界を過ぎった赤ならぬ彗星色の所為。それは、己がかつて慕った面影とは違うものだったかもしれない、人に言えば、気のせいだと笑われそうな幻影かもしれない。直ぐに雑踏に紛れてしまった影は、それでも、確かに。瞬間的に、ヴィクトーリアの手を、強く握った。]