[アンネの背を摩るのを交代した後ちら、とセラの様子を見る>>218
動揺を顕わにしている様子で、震えながら立つその姿。
――少しだけ、逡巡した後。]
セラ=リン=ドゥ。
あんた医療者だろうが。もっとちゃんと突っ立ってろ。
医者のお前が動揺してどうすんだ馬鹿。
あんたの目の前には患者が1人、いるんだぞ。
[それは冷たくも聞こえる言葉だ。
喚くなら矛先を自分に向けようという心算。
嘗て苦痛も絶望も、失望もすべて経験した身は、
嘆きも驚愕も心の奥に封じ込める事など苦ではない。
差し当たっては――そこで震える医療者に、一喝。
本当なら彼女の肩を叩いて慰めるのが良いのだろうけれど。
それでも、彼女は『医者』なのだから。
其れをするのは己の役目では、ない。*]