― →森 ―[人は己のことを気紛れと言うけれど、決してそんなことは無い。単に思い出したら、都度行動に移すだけだ。久しい再会に後ろ髪引かれながらも、別離したのも同じ理由。森の小道をランタンで照らしながら急くよう歩けば、狭くなった星空の下、目的地は直ぐに見えてくる。子供の脚とて用意に辿り着けるのだ、大人となった今、難儀をすることも無い。『還り灯屋』と、下げられた看板は、風にキコキコ錆びた音を立てて揺れている。十年前も、二十年前も、こうして揺れていたように思う。]