《信玄友の会》
誰にも言うなよ
呼び出された床の間で会長は
ちゃぶ台の上に特注の軍配と
真空パックされた甲陽軍鑑(万治二年刊)を置いた
お前に譲る 会はもうやめた
真実を見てしまったんだ ネットで
俺がずっと憧れて来た武田信玄のあの顔
艶のある頭皮とウェーブのかかったもみあげ
いかにも晴信めいたあの肖像画は
本当は畠山義続の顔だったんだ
本物の信玄の肖像画も見たけど…
ちっとも強そうじゃない
俺はずっと教科書に騙されてたんだ
何もかも嫌になった
肖像画のことなら私や他の会員はとっくに知っている
とは言い辛く、差し当たり遺留の言葉を脳裏に練る