[――…………「セラちゃん」……?
その響きに、覚えがあった。>>293
周りにいる誰とでも皆、心を隔てて接する事しかできない自分。
「ちゃん」を付けて呼んでくれるような友人などいなかった。
たったひとりを除いて――――…]
……………アン?
[小さく小さく、誰にも聞こえない呟きをもらして顔を覗かせれば、彼女はすでに目を閉じていたため>>294、眠りを妨げないようにと静かに衝立の影にまた隠れる。
記憶の中のあの子は、眼鏡をしていなかったけれど――
気づいてしまえば確かに、面影のある……気がする。
いや。ある。
ああ…………あの子が、ここにいるのか。
自分よりも幼かった彼女は、きっと“約束”の事など覚えてはいないだろう。語るつもりもない。
けれど、思い出のあの子がいると――それだけで
単純にも、何とかやっていける気がした。*]