《はひふへほの詩》
はるのひ ふらふら
へんなきもちになって ほわん
このまんま たんぽぽの綿毛みたいにして 風にそよいで飛んでいってしまおうか
きっと子供が こちらに向かって手を伸ばすでしょう
きっと僕は それをするりとすり抜けるでしょう
そうして河川敷で誰も知らない世界タイトル級マッチが開催されているあいだに 野良犬だけが真実を知ってしまうので
僕はウィンクして魔法をかけるでしょう
僕はいません 僕はいません 僕という人間はどこにもいませんでした
そこにあるのはたんぽぽとして咲きそびれた季節外れの彼岸花だけですって
はるのひ ふらふら
へんなきもちになって ほわん
欄干の向こうっかわに取り残された靴が 太陽に照らされてぴかぴかに輝いていた