[ きっと大丈夫と頷いて、向けた視線の先は窓の外。
一面に広がる黒は、よく耕された豊かな土壌か。
輝くネモフィラはここらは見えず。
それがまた、故郷での自分を思い起こさせて。
大母星より遠く離れた故郷、その主な産業は農業であり。
作物の多くを大母星に輸出することで、殆どの住人は収入を得ていた。
年を通して温暖な気候であったこと、はたまた土壌の関係か。
故郷でしか育たない薬草なども存在した。
けれどもやはり辺境でのこと。
多くの若者は都市化の進んだ星へと移住したり、戦いに出て。残る住人は老人ばかり。
そんな中に、キチェスが産まれ。
どのような話し合いが行われたのかはわからない。
恐らく、多くの金銭も動いただろう。
母星でのみ採れる作物の存在も、大きかったのかもしれない。
表向きは、住人の嘆願に国が動いた形。
けれども、裏を返せば―――利害の一致。]