『□□□の家に子が生まれたそうだ。
呼ばれて見に行けば、薄ら髪の生えた頭には
父祖と同じ、けれど小さな兎の耳があった。
長く、豊かな兎の耳は。
大地の声を確と聴くため、柔らかに俯いてゆくのだ。
そう言って、誇らしげに笑う顔を思い出す。
友と呼び合った頃は、最早遠く。
「祝福を」と求められれば、ほんの少しの寂寞と。
□□の残滓を疎む気持ちが、腹の底に落ちる。
あの星を礎にと、□□□が蘇らせた豊かな実り。
黄金に輝く麦の穂が、重く首をもたげるように。
生まれた子供の耳もまた、大地の善き友となりますよう。
祈りを捧げ、星の水で額を撫でた。』
(――卵型。優しくも力強い、地に生きる紋章の頁。)