[けれど、次の瞬間、体が凍りついた。
両親がキチェスであったことを知っている――>>320
ああ、そうか。
この名前は一部では“有名”。
名を隠したくはないからいつだって真っ直ぐに告げるけれど。
この前髪の下にキチェが無いことも、彼は知っているに違いない。]
――…ええ、そうよ。
私の両親はキチェスで…私はキチェを持たない出来損ない。
[彼の思考など知らずに言葉を紡ぐ。]
それでも私は、私の仕事をする。
[ぐっと力を込めて告げたのは、少しだけ泣きそうだったからかもしれない。
突発的な事態には、弱いのだ。*]