[君にだけは見せたくない。なんて、我儘。
どうせ嫌われてるならとことん、失望してもらえればよかった。
それでも結局彼女からの治療を拒むのは、自分の弱さ。
嘘をついた。自分から、彼女を傷つける言葉を吐いた。
大切にしたかったのに。それなのにどうして。
今、自分はアンネを泣かせているのだろう>>350]
……。
[そのまま去っていく後姿を、
もう体が怠くて動かしにくい手で追おうとして――
自嘲して、手を下ろす。
嘘だよ。君の囁く通りに。
うそだ、大嫌いなんて嘘だよ。顔も見たくないなんて嘘。
ほんの淡い思いだ。自ら摘み去った。
芽生えた初恋を押し潰し、投げた酷い言葉は。
きっと彼女を傷つけた。]