《秋の郷愁》まるで異世界みたいだと、見慣れた庭を見て呟いた。真っ赤に燃える楓のことも、甘い香りの金木犀も。大好きだった筈なのに。大切だった筈なのに。貴方がいない、それだけで。まるで知らない家のよう。――こちらが最後の荷物です。荷運び人の言葉に頷き、最後に雨戸をきちんと閉めた。私は今日、この見知らぬ故郷を置いて行く。