《ほんま理系どういうことなん?》
博士が来る曜日なので分銅秤を磨いておく
19:00ちょうどに来店した博士はいつもの口調で「アボガドロールセット、サビ1モル」を注文する
素早くアボガドロールを巻く寸前まで作ってから慎重な手つきでワサビを分銅秤に載せてゆき炭素12原子1モルに相当する分量
すなわち12グラムのワサビを練って具に塗り
巻いたものをカットしてお出しする
博士は仏頂面で口に入れて一瞬
満足そうに表情を崩したが、直後
サビを盛り過ぎだと言って箸を置く
申し訳ございません作り直します
と言ったものの何が悪いのか分からない
あの、と後ろからバイトの大学院生が遠慮がちに
アボガドロ定数の定義が最近変更されて
今は1モルは12グラムじゃないんです、という
じゃあ何グラムなんだと聞くと厳密に言えばキログラムと言う単位とは無関係な定義になったんですが強いて従来の定義に近い表現をするなら11.999 999 9958(36) グラムと言う事になります、という
この分銅秤の最小単位は0.01グラムだ