月狼国

299 [誰歓]詩人狼村11th[ガチ]


【見】 鉢植 スミレ

《春の夜》

こんな気持ちになったのは
毎朝窓から無遠慮に侵入してくる空の青さが鬱陶しくて、
そんな光に照らされる壁の無邪気な白さも嫌になったから。

目の前の机には萎れかけた菫の鉢植えと10円玉、
そしてナースステーションからくすねた薬瓶と酒瓶。
どうせ治らぬ病なら、コイントスで運命を決めてやるのも悪くない。

放り投げた10円玉は鉢植えに当たってそのまま床に落ちる。
上を向いていたのはーー

こんな気持ちになったのは
本当は私の気持ちは初めから決まっていて、
「運命」は言い訳に使いたかっただけだったから。

10円玉をひっくり返して机に乗せ、そうして片方の瓶に口をつける。

少しだけ心が楽になって、少しだけ壁の白さが和らいだ気がした。

(1542) 2021/03/04(Thu) 22:14:48

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