108 【飛び入り歓迎】赤狼署の新年会
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管理官 柊
[ボトルの中でシェイクされていた酒を楽しみながら
危なげなく進む残りのパフォーマンスを楽しむ。
最初は衣装に注目していた会場も、
今は披露される技と流れる曲に合わせて手拍子が鳴っている。
今年の舞台で彼女の目に生気が戻るといいのだが。
そんな思いと共に曲の終わりを締めた佐伯へ拍手を送った。>>98
グラスに二杯目を注いだところで次曲へと。
数々の困難を乗り越えながら署長へとグラスを運ぶ佐伯だったが
最後の最後でグラスを署長と真島にぶちまけてしまう。>>100
とはいえ赤狼署の新年会だ。
署長が酒を被っても、悲嘆の声はない。
会場に起こるのは笑いと。
舞ったグラスをピラミッドのように積みながらキャッチした
真島への拍手だ。]
刑事課 檜山
[刑事課の新年会当日。
しいちゃんは元気に赤狼署へやってきた。
ご両親には署長と柊が許可を取っている。
そして、この日だけは、署長命令で、ブラックは素通しされている]
『歌姫さん、先日ぶりだね。今日は俺の声は盗まないの？
あ、あとロバートとよろしくやってるかい？恋人みたいに仲がいいけど』
[わたしは、暫し考えた]
そんなに盗まれたいの？
意外とブラっ子は、攻められたい側なのかな？ふぅん…
残念だけど、今日君が盗むのは、しいちゃんのハートだよ。
俺じゃない。
ま、がんばって。
[意趣返しとばかりにブラックの声真似で返事をしてさしあげた。
衣装班を手伝い、ブラッ子ちゃんに服を着せ、メイクを施し、仕立て上げる。
署の新年会とは趣向を変え、ぱっと見柊管理官と比べても見劣りしないほどの美人へと]
刑事課 檜山
[艶やかに腰まで伸びる黒い髪。
黒い革の、ショート丈のジャケットは、
鎖骨もあらわに、柔らかく膨らみをもたせた
チューブトップを覆う。
目の錯覚で、実際よりも細くくびれて見えるウエストは
同じ革素材の、深く、ほとんど腰骨までスリットの入ったマーメイドスカートへと続く。
スラリと伸びた足は、ラメの入った網タイツで覆われ、スリットから覗くたび、スポットライトにキラリと光る。
腰に手を当て、モデルのようなポーズをとり
ウインクして投げキッスを、視界に入った<<新人刑事 ロバート>>に向けて投げた]
刑事課 檜山
[そんな怪盗ブラっ子ちゃんは。
まず手始めに、並べた的を2丁拳銃で撃ち抜く。
続いて、私たちも練習で使う、パタパタ動く人型ボードを
次々と撃ち抜く。
最後に、2丁拳銃で加工ボードを綺麗にダブルのハート型に打ち抜いた。
くるりとスリットを翻しながらターンして、観客席を向き銃を構えて撃つ真似をする。
ロバートのハートを撃ち抜くわよ♡
という風に見るものもいたかもしれない。
…ロバートくんは新年会から本当に人気者だ]
刑事課 檜山
[でも実際は。
観客席からスクッと立ち上がった、小さな人影があった。
かわいい！！
と女性署員から歓声が上がる。
佇むのはミニ版怪盗ブラック。
小さなタキシードスーツ、ちょこんと乗ったシルクハット。
羽織るマントは子供向けに丈は短め。
真っ赤なバラを手に持って]
『うつくしいれでぃ、ぼくはあなたにみせられた。
…ええと。つ、つみぶかいあなたの、ぼくへのきもちがしりたい…です』
[可愛らしい声で頑張って喋るのは、しいちゃん扮する、怪盗ちびブラック。
五代さんケースの作成者は、鬼のような無茶振りをすれば諦めるかと思ったが、まさか本当にやってのけるとは思わなかったとのちに述べている]
刑事課 檜山
[ブラッ子は、まあかわいい！と頬に手を当て感嘆するポーズ。
その間に黒子たちがしいちゃんを抱え上げ、舞台の上の椅子に座らせた]
『可愛い怪盗さん。
そうね、アタシ、あなたのハートを撃ち抜きたいわ？
大きくなるまで待っているから、お嫁さんにしてくれるかしら？』
『…よろこんで？』
[疑問系が、しいちゃんの心境を物語っているかもしれない。
柊以下複数名の署員が、言質を取ったとばかりに手錠を
チャラつかせている。]
パァン！
刑事課 檜山
[しいちゃんに向けた銃口からはピンクと白のバラの花びらが弾けた。
どこからともなく取り出した、同じ色合いのバラの花冠を彼女に被せてやり、
美女ブラッ子は観客へ一礼。
暗転後、追う音と逃げる音が聞こえたのはまた別の話。
そして、スマホケースはなくなっていた]
怪盗 ブラック
―― ブラック退場 対決加納――
今年もまた波乱万丈、いやいつも以上に悪意も作為も狂気も歓喜も入り乱れる新年会だった。予定されていた芸だしが終わると、
オーケストラピットから、エレキギターの音が大きくなった。
チャラリー チャーラーラーラーラーラーラー チャラリー
必殺仕事人の必殺テーマだ。
ゲスト席のブラックが立ち上がる。
舞台の上にゆっくりとあがると、客席をみわたし、手に持った２ふりの剣のうち、一本を投げ放った。
その剣がつきささったのは、加納の席の前。
怪盗 ブラック
「誘い」だ。
加納が立ち上がり、舞台に現れる。真剣を構える。
勝負は一瞬だった。
踏み込んだブラック。受ける加納。
ブラックのマントが半分にきられて落ちた。ブラックは、剣をしまうと、にっと笑う。
「さすが加納嬢。剣を持った時の美しさは格別だ。またお会いするときを楽しみにしてるよ」
怪盗 ブラック
彼女の剣技を、いや剣をもったときの加納を見たかった。
タイタニックだけでは足りず、間近で見たいと願った。
一礼して、右手をあげる。そこへ天井からロープが下りてくる。
チャラリー チャーラーラーラーラーラーラー チャラリー
再びエレキの音が響き
ブラックはロープが引き上げられるまま、天井へと消えて行った。
残された加納は、剣をしまう。その彼女の髪に、大輪の白い椿がさしてあることにその時、彼女は気づいただろうか。**
お茶くみ 佐伯
― 宴が終わって ―
[逃げるように有給休暇を取得して、ほとぼりが冷めるまで田舎に引きこもった。
署長に有無は言わせなかった。
実家の畑で大根を引っこ抜きながら、これからの私の身の振り方について考える。
新年会が終わればきっと赤狼署は元通りだろうけれど、私の扱いはどうなっていくのだろう。
バニーの次は腰ふりふり、そして下着披露である。
来年は何をさせられるんだ。
次の新年会までに辞めよう……。
そう決意を固め、収穫した野菜を土産に休暇を終えて戻った。]
お茶くみ 佐伯
「おう佐伯。
お茶淹れるついでにあれ見せてくれよあれ、新年会の！」
うるせーばか！
やりません！
[案の定、カクテルショーのことを掘り返され、お茶を持っていくたびに同僚にいじられる始末。
休憩時間のたびに、やってやってとせがまれてしまう。]
しょうがないな……もう。
[しぶしぶ、３つの湯呑みをジャグリング。
難なく背面キャッチを決め、急須からリズミカルにお湯を注ぎ入れる。
正直に言おう。
あの日から、このパフォーマンスが癖になってしまった。]
お茶くみ 佐伯
[かくして、赤狼署に名物がひとつ増えてしまうのであった。
『鮮やかなパフォーマンスでお茶を入れてくれる事務の女性』がいる、と。
噂はじわじわと広がり、気付けば辞められなくなってしまった。]
……なんということでしょう。
[まあ、うん、……いじられるのが矢島美容室とか下着姿じゃないだけまだマシだ。
それで良しとすることにしようか。
今度は、カレーを作りながらパフォーマンスしてみようと思う。
いつも浮かべていた虚ろな目はいつの間にか、困ったような苦笑いに溶けて目立たなくなる。
来年に待ち受ける受難までは、こうしてちょっとおかしな日常に甘んじているとしよう。**]
ミニパト 加納
[宴もたけなわ。
最後の出し物が終われば、馴染みの音楽が流れる。]
………………おや。
[動き出すブラックの様子に、まだ何かやるのかと視線を向ければ。
こちらへと投げ放たれる、一ふりの剣。]
……ほう。面白い。
[剣を手に持ち、舞台へと。
普段、捕り物で顔をあわせはするが。
こうして正面切って剣を持って対峙することは稀であった。]
ミニパト 加納
[勝負は一瞬。
油断はなかった。
風を切る音、衣服が裂ける音も確かに聞こえた。
――――が。]
まったく……。
見事なものだ。
[自らの髪を彩る花の香りに気が付けば。
苦笑い混じりに、肩を竦めた。]
ミニパト 加納
[派手な退場を見送りながら、
ゆるりとステージを降りる。
まったく、気障なことをしてくれる。
そう思いはすれど、なかなかにあの怪盗、
憎めないものだ。]
ミニパト 加納
なぁ、柊殿。
……今度、また。
捕物の際には、声をかけてくれぬか。
[また来年、などと見送るつもりはない。
それより近い将来に。
きっと、捕らえてみせようと。
管理官に声をかけながらも。
たなびく短めのマントを、遠目に眺めていた。*]
怪盗 ブラック
―― 宴の後 ――
そして再び、怪盗ｖｓ警察の夜がくる。
予告カードの赤い薔薇が贈られたのは、ある美術館の展示絵だった。
最近では予告カードがついた絵を見に来る客も多いので、カードごと昼間に展示してある。
昼間、絵の下見にきたブラックは、混雑した美術館を、大勢の人たちに紛れその絵の前までたどりつく。
そして―― 見てしまった。
怪盗 ブラック
絵の横に
大きなポスターがはってあって。
新年会のブラッ子としいちゃんの怪盗姿がしっかりうつっていたのだ。
そのポスターはＴＶでもとりあげられ、怪盗の手がかりとして話題になった。
真夜中。警備の隙をついて絵の前までたどり着いたブラックは、そのポスターにピンク色のペンでしっかりサインをしておいたらしい。
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