76 【完全RP】輪廻の果てに
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観測者 メアリー
[多少なり言葉を交わしただろうか。
熱された感情は冷め始めれば速い。
それがわたし、マリーベルという人間だった。
冷め切ればその後には黒く冷え切った塊が残るだけ。
以降はもう一度熱されない限りは熱くはならない。]
…こう見えて、もう二十年は生きているの。
「子ども」じゃあないのよ。
[そう口にしたなら一区切り付けることにして。
他の研究者へも説明が要るかしら、と考えながら
基地へ向かわないかと提案でもしてみただろう。
答えがどうだったにしろわたしは先へ戻るつもり。
名前を全て名乗っていないことに気付くのはまだ*先のこと。*]
薬学研究者 アンネ
ー 廊下→部屋 ー
［まだ冷めない自分の頬を抑えながら。自分の行動を思い返す。］
大事な、初対面の日なのに……私ったらダメダメじゃないですか………ぐすん。
［でも、出会う人皆、良い人たちばかりで。］
パパ、ママ、アンネは何とかやっていきそうです……！
［まだ見ぬ仲間たちにも想いを馳せながら。
道中、誰かに会えば丁寧に挨拶をし、にこやかに会話を楽しんだだろう。
そして、やっと部屋へと辿り着いた**］
植物学者 オルテンシア
―― →自室――
[ 幾分軽くなった足取りで廊下を歩き、自室へと向かう。
コールドスリープに入る前、間取り図は確認した。
とはいっても、あまり方向感覚が良い方ではないため、無事に辿り着けない可能性はあったが。]
(そうなったら探索だと思えばいいかしらね……)
[ 故郷で道に迷わなかったのは、植物たちが教えてくれていたから。
迷わずに温室へ辿り着けたのも、植物たちが案内してくれたから。
自分一人ではできないことも、した事がないことも多すぎる。と、内心苦笑いをして。
道すがら、誰かに会ったなら挨拶くらいは交わしつつ、場合によっては道を尋ねたかも知れないけれど。
それでもなんとか、自室へとたどり着いた。]
植物学者 オルテンシア
[ 自室へ入ればすぐに、手の中の植物を机に下ろし、事細かに観察する。
ピンと伸びた葉っぱは、元気を取り戻してくれた証拠。
この分ならば大丈夫だろうと判断しつつ、念のために水を入れたコップに挿しておくことにする。]
(談話室にいた時間が良かったのかも知れない。)
[ ニケと名乗った、若葉と同じ色を持つ男性。
彼と過ごした、優しい時間があったからこそ、この子は元気になったのだろう。
いくら自分がキチェを持っていても、植物と心を通わせられても。
温室を出た時の心のままでは、この子を元気にすることなど出来なかったと。]
(明日には温室に帰ろうね。
お母さんの隣に植えるから。)
[ きっと、しっかりと根を張れる。
―――なぜならば、この植物の名は、地球でいうところの「ミント」
田畑に混ざれば駆逐が困難なほど、力のある植物だから。]
植物学者 オルテンシア
[ きっと大丈夫と頷いて、向けた視線の先は窓の外。
一面に広がる黒は、よく耕された豊かな土壌か。
輝くネモフィラはここらは見えず。
それがまた、故郷での自分を思い起こさせて。
大母星より遠く離れた故郷、その主な産業は農業であり。
作物の多くを大母星に輸出することで、殆どの住人は収入を得ていた。
年を通して温暖な気候であったこと、はたまた土壌の関係か。
故郷でしか育たない薬草なども存在した。
けれどもやはり辺境でのこと。
多くの若者は都市化の進んだ星へと移住したり、戦いに出て。残る住人は老人ばかり。
そんな中に、キチェスが産まれ。
どのような話し合いが行われたのかはわからない。
恐らく、多くの金銭も動いただろう。
母星でのみ採れる作物の存在も、大きかったのかもしれない。
表向きは、住人の嘆願に国が動いた形。
けれども、裏を返せば―――利害の一致。]
植物学者 オルテンシア
[ 愛されてはいたと思う。大事にされてもいただろう。
何も知らない子供の頃は、無邪気にただ唄っていた。
生い茂る緑と、喜んでくれる人々。それがただ嬉しくて。
育てた命のうち、選り分けられるものがあると、気がついたのはいつのことか。
唄うことで収穫量が増せば、それだけで満足とはいかなくなる。
更にを求め、元からあった森林も開拓され、農地へと変わり。
育んだ命の分だけ、奪う命もおおくなり。]
(そういえば―――……。)
[ かつて一度、故郷を訪れたという人。
その人はどうしているのだろうか。と、考える。
感化されてはいけないからと、会うことは叶わなかった人のこと。
出身地が不毛の地だとは、書類でのみ知った。
そこで唄えたならと。
思うことすら、故郷の人を裏切るようで痛かった*]
観察者 ニケ
[ 星を見るんだ。そう、約束した。
明日もまた、一緒に星を見ようって。
”あいつ”は唯の女の子だ。
幼馴染の、俺より背が低くて、
サーチェスが強いだけの。頭の出来が良いだけの。
唯の、女の子なんだ。
あいつの生まれ持った能力（ちから）が強力で、
大人たちや同年代からの視線にも顔を強張らせていたのを知っている。
星を見る時、すごく輝いた顔をしてたのも知っている。
――星を見る時、全部忘れて幸せになるんだって、考えてたのも、知っている。
あいつの両親が、あいつを怖がってたのも知ってたんだ。
それでも、あいつが新しい友達をたくさん、たくさん。
欲しいって思ってたのも、知ってたんだ。
大きくなって、今より自由が増えたら
もっと綺麗な星を見に行きたいと、語り夜空に伸ばした両手。
その手を連れ去ったのは、大人の都合だって、ことも。]
観察者 ニケ
[翡翠を細め、眉間に皺を作り。
己の過った思いを否定する様に、心の底に沈ませて。
大切だった幼馴染。
結局あいつは約束なんて覚えてもいなかったし、
友達というカテゴリの人間ならば、近くに居るのは誰でもよいのだ。
彼女に好感を抱いている相手なら、誰でも。
幼い頃の約束なんて、きっと君には路傍の石ほど価値のない物なのだろう。
そう、思い込み。
信じても裏切られるなら、最初から期待しない方が良い。
破られる約束など、しない方がいい。
そう、頑なに信じている。
――君を絶対にもう、信じないと。]
観察者 ニケ
[温室から一番近い部屋。KKは見えぬ其処を自室に貰い、
無機質な部屋に寝転がる。
天球儀と、論文と、幾つかの蔵書と研究道具。
趣味などないし、持ってくるものは限られていた。
そんな殺風景も、半年すれば変わるのだろうか。
コールドスリープから目覚め、初めに出会ったメアリー。
彼女と、もう1人の友人であるドロシー。
シュテンが懐いていたジャス=ミン。
心優しいオルテンシア。
よく顔を朱くするアンネ。
心優しき人々の中で、虚ろを抱いて唯佇む。
たった半年、されど半年。
彼らとの交流がどんな変化を自分、或いは彼らに齎すのか。
今はまだ、分からぬ未来（さき）の話だ*]
【独】 観察者 ニケ
[知ってたのに、見ないふりをしてたんだ。
――大人の都合だって知ってたのに。
もう君を信じないと頑なになったまま。
酷いのは、俺の方だって、知ってるよ――*]
医学博士 セラ
─ 現在：基地廊下 ─
[ぱっと診たところも本人の言動にも問題なさそうだ。
診察とも呼べない簡単な観察結果ではあるが、彼も健康だと判断していいだろう。
正式なメディカルチェックはもう少し後にするとして。]
了解。何よりだわ。
……私？
私は、大丈夫……ありがとう。
[逆にこちらの異常がないかを問われるとは思わず、俯き加減に視線を落としながら、少しだけ口ごもる。
おそらく年長であろう彼が半年間ともに過ごす同士として自分を気遣ってくれただけ。
それだけの気遣いが、うれしいと思った。]
ハールーン＝ルト＝ワヒド＝ジャス＝ミーン、ね。
よろしく。
[彼が自己紹介してくれれば顔を上げて。
頼もしげに長身を見上げる。*]
植物学者 オルテンシア
[ 不毛の星からの来訪者。
その人が来たのと同じ頃、自分よりも幾つか年上の人に会ったことがある。
調査に訪れた者には、会わせるわけにいかないからと。
外に憧れてはいけないからと。
締め切られ、閉ざされた住処が嫌になり。
窓から逃げ出した時だったか。
それが誰なのかはわからない。
かつての友達か、老人たちの孫が訪れたのか。
ただ、少しばかり言葉を交わせば。
顔色を変え、飛んできた人に連れ戻されて。
あの時ほど、自分がキチェスであると感じたことはなかった。
結局、彼の素性も名前すらわからずじまい。
面影すらも、今では記憶の彼方*]
医学博士 セラ
─ →自室 ─
[ハールーンと別れて、背を伸ばしたまま歩き続ける。
途中、メリッサ=デル=ネール=サ=クゥラに遭遇し、彼女にも状態異常がないことを認めた。
――しかし、まどろっこしい。
診察対象をわざわざ探しに行かなければいけないとは。
部屋に着いたあとは、医務室をチェックしに向かって。
それから基地内全体へアナウンスしよう。まだセラ＝リン＝ドゥと会っていない者は状態確認のために医務室に来るように、と。
それくらいの設備はあるだろう、いくら辺境の地とはいえ。無かったら作ればいい。
人を相手にするよりも本を読んだり機械をいじったりするのが長かった子供時代。何とかなる。
そうだ、携帯通信機器の整備も――いや、それより医療設備を充実させなくては――。
これからの事を目まぐるしく考えていると、個室の並ぶブロックへと辿り着いた。
ひとつの部屋に入って、まずは宇宙服を脱いで収納。
それから、ぐるりと部屋を見回す。
――ここが、半年間暮らす部屋。]
医学博士 セラ
[やることは山積みだ。だけど、少しだけ、少しだけ。
ベッドに腰掛け、心細げに背中を丸める。
やっていけるだろうか――何も持たない私が、こんな遠く離れた地で。知らない人々と……キチェスと。
やるしかないと分かってはいても。
一人になると不安で、両手を胸にあて、サージャリムに祈った。
どうか、皆無事に、半年間の任務を果たせますように――*]
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