《融点》
エアコンの修理をした。
早く腐りたかったからだ。
頭上では10進数と2進数が一騎打ちを繰り広げていて、どっちでも変わらないよと野次を飛ばしてみる。早く天使とか通ってくれればいいのに。おかげでわり食って、イヤホンがノイズ吐いてる。ああ、素数が存在したばっかりに。
わたしとリモコンの間に垂線を引いたらそこに案山子みたいに冷蔵庫が立ってるんだけどさ、
「プリンの賞味期限は1年前に過ぎました」
そんなの誰も聴いちゃいないよ、ありがとう教えてくれて、ごめんね食べられなくて。凍らせばアイスになるでしょ。そんな前のことで戦争なんて勘弁して欲しい。先日5円玉犠牲にして何願ったか覚えてる? 世界平和。
今ここで体現してんだよ。ご丁寧に貼り付けてもう動く気もない
痩せた月と目が合った。パリン。
手元の鋏を投げつけて、星が降るのを待っている。
3回唱えたら、わたしの躰には切り取り線がひかれる。