月狼国

313 【誰歓】詩人狼村6th【ガチ】


【乙】 早乙女(サオトメ)

《潜伏者達》
ごはん
と呟いた形の口で突然目が開いた
何か考える前に右手が朝食を握っている
覚醒時の嗅覚だけが俺を動物にする
むき出しの死のえぐ味を噛み潰し
食道に押し込んだ瞬間に
休んでいた耳が外の音を一斉に拾う
獣が消えた後に残った臆病な甲虫が
暗がりで息を殺している
×印だけが書かれた手帳
二人でトウコウすると決めた日から三日
Nはいつも私の分まで殴られていた
笑い声が聞こえた気がして
一層隅に寄り身を縮める
影の隙間から小さく青空が見える
Nはまだ生きているだろうか、と
半ば義務的に胸を痛めながら
頭は日暮れの空腹に備え始めている
青空は潜伏者達の殺した息で塗られている

(831) 2019/06/12(Wed) 23:43:09

(0.19 CPUs)
SWBBS V2.00 Beta 8 あず/asbntby
当サイトは日本国内専用です。
海外からの操作・閲覧は保証しかねます。
管理人 by yukari
雑用 by apricot/garnet