私の読みたい物語
「この本も面白かったわね」花守は読んでいた本を閉じると窓の外を見た。
もう半年くらいベッドの上で過ごしてきた花守であったが、退屈することはなかった。
母親が図書館から借りてきてくれた本が10冊以上、
ベットの脇のテーブルに積まれている。
「明日にはお医者さまの診察結果も分かるはずなのよね」先々週には混濁していた筈の意識も不思議とすっきりとして、
体調も幾分か回復しているような気がする。
窓の外の景色の移り変わりを楽しむだけでは、
長い入院生活は耐えられない。
本の世界に自然と没頭するようになった。