影の嘆き
シナリオ制作:色猫卓
陽の微笑みと対になった内容です。
今回は動画化することを前提に別々のPLに回しましたが、背景事情がリンクしていますので、同じPLに回していただくことを推奨します。
■背景事情
バラバラ殺人事件の犯人である館の主は、十年前に衰弱死しています。
一方、彼が事件を起こす切欠となった一人娘は、彼よりも先に亡くなり、亡霊として館に現れるようになっています。
魔道書の読み解いて魔術師となった父親は、娘の魂が館の地上にあることに気が付かぬまま、娘を蘇らせる為の研究を続ける。
すぐ近くにある娘の魂に気付くこともなく、その魂を探し求める。
館には平凡な見せかけ(ルールブック280ページ)が範囲・効果ともに拡大してかかっています。
これは館の主が自身への疑惑や追及、他者との関わりといった煩わしさを避ける為に、敷地全体にかけたものです。
誰かが竹林に入り込んだならば、魔法を発動。(その際にMPを吸収)
残りは自動で継続するようになっています。
これにより、竹林から屋敷には案内なしには辿り付けず。
また、万が一誰かが屋敷に辿り着いた場合も、違和感がないように認識されるようになっています。
■登場NPC
押水 綾
館の一人娘。PCと同行します。
実際は亡霊であり、魂のみの存在です。
館では発動した呪文(拡大解釈込み)で、他者から知覚できるようになっています。
■導入案
ノスタルジックな演出をするならば、十年前に娘と知り合いだったことにしたり、その娘が夢に出てきたり。お好みでどうぞ。
(死んだことを知っているかは、おまかせで。どちらでも美味しいと思います)
動画では竹取物語でした。
竹林にさえ行ってもらえれば、そんなのでもいいんです……!
■竹林
事前に情報収集をするならば、
という情報を開示。
竹林に入ってから、MP消費。
(セッションでは1d10で振ってますが、探索者のMPに応じて要調整)(気絶しない程度に)
術が発動した後は、いくら歩いても目的地に辿り着けない。
暫くした後、声がかかる。
そこに現れたのは、和服姿の少女。
別に和服じゃなくてもいいのですが、単に竹林だったので和服が映えるとそうしているだけです。
(&制作者の趣味)
探索者が怪しむようならば、動画のように
「テレビも見れば、ゲームもやる。プリキュアとか」
という下りを入れても構いません。
なぜプリキュアかというと、十年前にもやっている番組だからですね。
もしどのプリキュアか食いつかれた場合には、言葉を濁すことになります。
(誤魔化すポイントでもあり、感づかせる切欠を与えるポイントでもあります)
(もしプリキュアに食いつかれたなら、シリーズを答えることなく誤魔化すようなロールプレイを入れてください)
■館一階
基本的な探索ヶ所は少なめです。
必要に応じて追加要素を入れるなり、アレンジを加えてください。
●綾の部屋
基本はごく普通の女の子の部屋です。
ただ、本棚や洋服箪笥を調べて<アイデア>に成功すると、並んだ本のラインナップや洋服のセンスが古いことに気が付くかもしれません。
そこに並んだ本や洋服は、全て十年前のものです。
●書庫
医学書や辞書など、難しい本がいっぱい。
調べ物がある場合は、何か本を出すと良いかもしれません。
(地下で出てきた魔術書を読み解く場合の辞書探し等)
床下扉があり、そこが地下への入口となっています。(鍵付き)
●父親の部屋
綾は部屋には入ってこない。
当人曰く「入ったらダメって言われている」とのことだが、実際は入れない。
本棚に目星or図書館で手記1を発見。
また、部屋全体に<目星>をするか、あるいは机を調べた場合に、地下扉の鍵を発見する。
以下、手記1の内容。
最初のうちは、娘の看病日記のようになっている。
どうやら、娘は生まれつき身体が弱かったらしい。
励ましながらも、看病していた様子が綴られている。
妻を亡くしてからは、日記の主は娘の看病にかかりきりだったことがわかる。
しかし、一人娘にも先立たれてしまった。
そこから先は、少しずつ様子が変わっていく。
××月××日
ようやく見つけた。
長いことこの本を研究視続けた甲斐があった。
死者を蘇らせる為の呪文。
これがあれば、綾を蘇らせることが出来るのだろうか。
あの子の笑顔がもう一度見られるならば。
私は、どのような方法でも実行してみせよう。
今少し、この本について、術について、研究してみよう。
××月××日
なんてことだ。
蘇らせる為には「完全なる死体」が必要だと書かれている。
あの子の身体は、病院で息を引き取った後に火葬された。
もはや、完全なる死体など存在しないのだ。
どうすればいい。
どうしたらいい。
××月××日
私はなんて愚かだったのだろう。
肉体がないならば 作ればいいじゃないか。
幸いにして、その為に役立ちそうなことも、
この本には色々と書かれている。
綾を蘇らせるためだ。
これは、必要な犠牲なのだ。
××月××日
綾によく似た子を攫ってきた。
だが、その子を殺し、蘇生の呪文を唱えても、
肉体の魂が戻ってきただけだった。
お前じゃない。
お前は、綾ではない。
この方法では、ダメだ。
綾の、あの子の魂を連れてこなくては。
魂についての研究も、同時に進めるとしよう。
××月××日
一つの肉体で器を作るから、その魂が戻ってきてしまうんだ。
複数の肉体をかけあわせたならば、その所有者は特定されない。
せっかくならば、より良い部品を集めて、綾にそっくりな器を作ろう。
より、あの子に似ている髪を。
より、あの子に似ている指先を。
より、あの子に近い身体を。
あの子のように、細くしなやかな脚を。
素材ならば 巷にいくらでも 溢れているじゃないか。
手記1はここで終わり。
(薄い日記帳だったため、ページを使い終えた)
今回のシナリオは手記を読んでいくようになるので、なるべく拾い漏れのないように。
図書館失敗した場合、その分時間がかかったという処理で進めていたいた方がスムーズに進行できると思います。
部屋を出ようとすると、扉の内側にエルダーサインが刻まれていることに気が付く。
(綾はこれによって入れない)
探索者が「これが何であるか」を知るためには、<クトゥルフ神話技能>に成功する必要があります。
ただ、成功せずとも「なんらかのお守りか魔方陣、結界的な物が描かれている」と説明をすることで、PL・PC共にそれっぽいものであると伝わることでしょう。
綾が居ないと気付いたタイミングで、聞き耳判定もどうぞ。
成功すると、奇妙な笑い声が聞こえてきます。
この笑い声は地下にいる星の精によるものですが、女の子の笑い声に似ていると描写することで、綾へのミスリード材料として使うことも可能です。
■館地下
●通路&装置
通路の奥には炉を思わせる装置がある。
レバーと覗き窓がついている。
開閉やレバー操作の為には、鍵が必要。
覗き窓から中を覗くと、白骨がどっさり。
(0/1d3の正気度ロール)
この装置で犠牲者の魂を抽出してMP源としています。
レバーでオンオフ。
後は誰かが迷い込んできたら、発動の切欠となるMPのみ当人から抽出して、残りはここから供給して呪文をかけ続けるようになります。(という便利設定)
●部屋1
研究部屋。聞き耳しても何も聞こえない。
扉の内側にはエルダーサインが書かれたお札があり、そのままでは綾は入れない。
綾が入ってこない旨と、エルダーサインが扉の内側に貼られている旨を伝えて、探索者にどうするか任せよう。
(綾は父親のことが気がかりなので、入りたがっている)
中に入ると、机がいくつか(書き物机と研究用)と本棚がある。
机では父親が衰弱死している。
父親の遺体に近づくと、ガウンが落ちる。
調べたり、ガウンを持ち上げると、ポケットから装置の鍵が出てくる。
本棚に手記2、机の上(遺体の下)に手記3がある。
以下、手記2の内容。
××月××日
肉体と魂の研究を続ける傍ら、
本に書かれていた生物をいくつか呼び出し、
使役することにした。
あの声は癪に障るが、なかなか役に立つ。
あの透明な身体は、人知れず素材を調達するには重宝しそうだ。
だが。”あいつ”は、ダメだ。
どうしようもない、出来損ないだ。
人の記憶から大事な相手の姿を読み取るとあったから、
不確かな記述ながらも召喚を試みたというのに。
現れたのは、とんだ失敗作だった。
呼び出してすぐに、少女の遺体を切断する様を見たからか。
喰らったその血肉がそれほど美味だったのか。
それとも、四肢をもいだ際の断末魔がよほど気に入ったのか。
一時的とはいえ娘の姿を見れればと思って呼び出したあれは、
馬鹿の一つ覚えのように、喰らった少女の姿を映し続けていた。
魔日獲物を探す傍ら、壊れたビデオのように、
あの娘を解体した時の様子を再現し続けている。
出来損ない故に、他の姿を覚えられないのかもしれない。
あの役立たずな妖蛆は、手に入れた娘の肉体のかわりに、
その家に”棄てて”きた。
あんな出来損ないでも、娘の姿が見れるのだから、
少しは役に立つことがあるかもしれない。
××月××日
こんなところにまで、人が来た。
子供が攫われているとのことで、どうやら大々的に捜査が行われているらしい。
口ぶりからして疑われているわけではなさそうだったが、
このままでは面倒なことにもなりかねない。
少し、術を試してみることにした。
××月××日
大がかりな術をかける為には、それなりのコストがかかる。
迷い込んだ相手から徴収するのもいいが、それではすぐにバレてしまうだろう。
一つ、装置を作成した。
せっかく器の素材を集めているのだ。
この魂も、何かの役に立ててあげよう。
これで竹林に辿り着くことも難しくなれば、
屋敷で見るもの全て、本人の意識に違和感のないものに
差し替えて見えるはず。
事実を知る者にしか、事実は見えてはこない。
手記2を調べた後、本棚の隣の部分に該当魔術書(妖蛆の秘密)があると伝えても良い。
探索者に魔術書持たせて困る場合は、渡さずにスキップしても可。
もし星の精他を呪文で対処させたい場合は、ここに情報を置いても構いません。
以下、手記3の内容。
××月××日
また、失敗した。
素材はしっかりと吟味した。
掘り出してきたあの子の骨を埋めてみた。
それなのに。どうして。
あの子の魂が、宿ってくれない。
寝食を忘れて研究に没頭しているというのに。
出来上がるのはなり損ないの愚図ばかり。
器に宿る魂は、どれもあの子のものではない。
あの子の魂が見つからない。
魂を抽出する術も、
魂を閉じ込める術も、
全て調べ、全て覚え、全て試したというのに。
肝心要の、あの子の魂が、ないのだ。
それがなくては、宿す為の器をいくら用意したとて、意味がない。
どうしてだ。
私の研究に、何が足りないというのか。
器作りに使った材料の残りばかりが増えていく。
私はただ、あの子に会いたいだけだというのに。
娘にもう一度会いたい。
そんな願いさえ、叶わないというのか。
綾。お前は今、どうしているんだ……。
●部屋2
監禁部屋。子供の骨が散らばっている。
廊下で聞き耳をすると、笑い声が聞こえる。(星の精の声)
入ると、星の精に襲われる。
(星の精については基本ルールブックp190参照)
エルダーサインを持っている場合は、それを加味して戦闘回避に使っても可能。
子供の骨が散らばっている以外は、特に情報はなし。
■綾について
基本は怪しい存在です。
RP部分は別として、情報として地下に入る前に
これらが開示されています。
綾を怪しんで遠ざけるも、親身に接するも、探索者の判断次第でしょう。
どちらが正解でどちらが間違っている等もありません。
KPはニヨニヨ見守りましょう。
もし探索者が綾の正体に気が付かない場合は、
なかなか伝わらなさそうな場合は、父親の手記内に
奇妙な亡霊が現れているようだ。
煩わしい。
もっとも、護りがあるところには入ってこれないようだが。
的に記述させても可。
(気付けよおいって話にもなってきそうですが)
気付かなかった場合、最終手段としてアイデアを振らせて、そういえば流し読みした中にこんな記述があったと伝えてもいいかもしれません。
■綾側の行動
探索者の接し方と、KPが物語をどう演出したいかで決めてもらってOKです。
ホラーにも使えれば、動画のようにもなります。
綾側の基本行動は、父親がどうしているかを知りたい。というのが一番にあります。
知った後にどうするか。
探索者が綾にきちんと接してくれたならば、手酷く扱うことはないでしょう。
探索者が親身になってくれていた場合は、危険を回避させるよう忠告してくれたり等も有り得ます。
(綾との親密度が高い場合は、星の精がいる部屋は危ないと知らせたり等して構いません)
もし探索者が警戒するあまり綾に冷たい態度を取っていたり、父親のことを教えてくれなかった場合は……。
KPにお任せします。
動画の最後にあるように、炉を調べている時に探索者をその中に閉じ込めようとしたり。
邪魔をしたり、星の精と戦闘開始した時に扉を閉めたり等。
そういった行動に走る可能性もあるかもしれません。
(ただし、行動によっては探索者の危険がかなり高くなります。そういった行動を取らせる場合はそのことも十分に考えてください)
■エンディング
事件の調査に来ていた場合は、手記を全て回収した時点でフラグ達成。
迷い込んだ場合は、レバーを引いて術を解除することでフラグ達成となります。
●グッド
動画参照。綾は真実を知り、自分から成仏する。
レバーを引いて、屋敷と竹林は元通り。
探索者は無事、竹林を出て元の生活に戻ることができる。
SAN回復1d10
●ノーマル
レバーを引いて、屋敷と竹林は元通り。
探索者は無事、竹林を出て元の生活に戻ることができる。
SAN回復1d6
●バッド
星の精との戦闘を回避できずに死亡するか。
あるいは綾の機嫌を損ねてしまうか等々
※ノーマルED時の綾について。
レバーを引いた時点で、綾のことは見えなくなります。
その後の演出等は基本はお任せしますが。
後日、近所の噂で父親を捜し求める少女の幽霊なんてのが発生しても、面白いかもしれませんね。
あくまで一案として。
妖蛆の秘密はお好きにどうぞ。
もし探索者に持たせたくない場合は、術が解けた際に劣化してしまったとしても可能。
(実際は十年くらいではそこまで劣化はしないですが……元々古い本ということで一つ)
特に探索者達が回収しなければ、そのままでも。
通報した場合は警察が押収するかな?
■最後に
見ての通り、シナリオってほどしっかりと纏めてあるわけではないので、あくまで概要として。
こんなふわふわ概要でも回せる方は、ご自由にどうぞ。
シナリオ 陽の微笑み