月下学園怪奇譚 ~第4章~

シナリオ制作:色猫卓

月下学園怪奇譚の続編です。
1~3章をプレイした方向けの継続シナリオとなります。

■4~6章共通してのシナリオ背景

※ここから先を読み進めるより先に、まずは動画でシナリオの流れを一通り見ていただくことを推奨します。

まず最初に、月下学園怪奇譚のテーマは「シナリオの裏でNPCに変化が起きる」ことです。
4章で登場する名取親子、そして5章で登場する史岡。
彼等は元々知り合いであり、繋がっています。

名取の母親が関係を噂された教師というのが、史岡その人です。
彼は噂により勤めていた学校を辞職に追い込まれています。
英原が彼を教師ではなく郷土史の研究家として紹介したのは、学校を辞職した直後のため。
彼自身教師を辞めて時間があった為に、友人からの相談には積極的に調査に乗り出します。

そうして、史岡が首無し塚のことを詳細に知って行きます。
彼は首無し塚の地下に祭壇があること、そこに封じられているのが月下市に現れた織田信長であることを知り、その真実を確かめるために祭壇へと向かいます。
そこで彼は悪心影(マレウス・モンストロルムp,199、あるいは比叡山炎上p,133黒き鬼武者参照)を呼び覚まし、憑依されます。

この時点で既に史岡は人としての道を完全に踏み外します。
こちらで想定しているシナリオでは、彼を助けることは出来ません。
もし史岡の救済も考えるKPがいれば、シナリオの改変にて対応をお願いします。

首無し塚に封じ込められていたのは、悪心影。
社と祭壇は供養のためではなく、悪しき存在を封じるために建てられたもの。
地上の社と地下の祭壇二つにより大暗黒天の力を借りて彼の存在を封じていました。
しかし、社が取り壊されたことにより、封印が弱まります。
これによって、黒仏が地上に現れることになる。

この黒仏、比叡山炎上p,129によると「大暗黒天に取り込まれた人間達が変身した怪物」とありますが、比叡山炎上p,133ニャルラトテップの項にある「無貌の黒法師」もまた黒仏と同一視されています。
4章で出てきた黒仏は信仰が薄れていること、社をぞんざいに扱われたことへの大暗黒天の怒りでもあり、また封印が薄れたことにより地下に封じられた悪心影の影響が滲み出た結果でもある。
これに関してはどちらの解釈も正しく、また一方のみの理由ではなく両方有り得るとしても良いでしょう。
展開によってより説得力のある方を理由としていただければと思います。

■登場NPC

・名取幸

春に転校してきた少女。
生徒PCのクラスメイトとしてください。
転校してきてから榊の授業も受けたことがあり、音田歌穂とも面識はあります。
どこか斜に構えたような態度を取り、転校生であるということを差し引いても、クラスでは孤立しがちな存在です。

STR9 CON11 SIZ10 DEX14 APP12 EDU9 INT11 POW8
HP11 MP8 SAN40 アイデア55 幸運40 知識45
特記技能:<応急手当>(45%)<歴史>(35%)<隠れる>(40%)
<コンピューター>(30%)他

名取のステータスはある程度自由にしていただいて構いません。
もし探索者達に苦手な分野があるようならば、6章での探索サポートとして技能を所持させることも可能です。
背景事情として、名取は史岡からの授業は真面目に受け、彼を教師として尊敬していました。
そのため、<歴史>の技能は少し高めにしてあります。
それだけに彼の裏切りにより人間不信となっている状態です。(POW・SAN値は平均よりも低め)

・名取治

名取幸の父親。
妻が娘の通っていた学校の教師と浮気したと噂になり、現在別居中。
ただ彼は建築会社に勤めていて、現場次第で引っ越しも多い。
娘を連れて行くには向かないと、名取幸は母親の元に残されます。
現在工事現場での事故により入院中。

・名取美由紀

名取幸の母親。
夫は建築会社で働いていて日々忙しく、時間を持てあましている。
娘のことはそれなりにかわいがっており、愛情も注いでいたはずが、娘の将来を心配して相談をしていた教師につい入れ込んでしまう。
娘のことを出汁に使い教師と二人で会う時間を持ち、それが他者に目撃されて噂となる。
母親は「みゆき」、娘は「さち」の設定です。(一応)

・史岡

郷土史の研究家であり、英原の友人。
英原とは教育学部時代に知り合った。
お互い教職の道に進んだが英原は名取の母親と不倫関係を噂されてこの春に教職を辞した。
高校教師としては歴史を担当しているが、郷土史や民俗学を得意としている。

・英原

榊の後任として来た英語教師。
史岡とは教育学部での友人です。

・大地

団地建設予定地の地主。
既に定年退職したが元教師で学校関係者には顔が広い。
学生には厳しくもあり、優しくもある。

・但野

名取が前にいた学校の教師。

※NPCの名前はだいたい適当につけてますので、自由に改変してください。

■導入イベント1「名取幸という生徒」

3章までの事件を終えて、再び元の平和な学園生活へ。
音田と榊は学校を去り、今の学園風景を描写。
音田と榊の関係は噂になっていて、いまだ一部で話題に上がっている。
特に同じ吹奏楽部だった生徒は二人の会話などを見ているため、二人がただならぬ仲であったことを知っている者はそれなりに居る。
とはいえ、吹奏楽部ではシャンに支配された榊から音田が生徒達を庇っていたような状態。
音田のことを悪く言われることはないが、噂は確実に広まっている。

春からクラスに来た名取幸という女生徒。
彼女は音田と榊のことを一方的に毛嫌いして、悪く言っている。
背景として、彼女は自分の母親と教師の不倫により元の学校に居づらくなって転校してきたという事情がある。
教師と関係を持った音田に対し、彼女のことは良く知らぬままに悪印象を持っている。

それに対し、音田と親しかった東美和などは突っかかっている様子。
導入では名取幸という生徒を紹介し、やや尖った印象を与える。

※教師PCは導入時点で以下の情報を知っていても構いません。

  • 両親は別居中、名取は現在母親と一緒に暮らしている
  • 前の学校に居づらくなり、転校してきた

それ以上詳しい事情を知りたい場合は、前の学校に問い合わせるか名取の母親に連絡をして調査が必要。

■導入イベント2「後任教師の決定」

東からの情報。
ようやく榊の後任となる英語教師が決定し、翌週(※)から赴任する予定。
それに対しても名取は
「どうせ教師なんて誰が来ても同じ」
と、教師自体を毛嫌いしている様子。

<心理学>を使うなら、教師という存在そのものに良い印象がない、やや人間不信気味になっていることがわかります。

※別に翌週でなくとも翌日でもなんでもいいですが、翌週ということにして週末に調査を行うのがスムーズに行くと思います。
適当に時系列にあわせてください。

■導入イベント3「川の異常」

休み時間、窓の外を眺めていた生徒が突然大声を上げる。
声につられて窓の外を見れば、学校近くを流れる川がどす黒く染まっているのが見えた。

付近住民も異変に気付き、川には人が集まっている。
遠目に見た時にはどす黒く感じたが、近くで見ると黒にも赤にも見える。
川の周辺には奇妙な臭いが漂う。
鉄のような、錆のような、血のようにも感じる臭い。
連絡を受けた市の職員がやってきて、川には近づかないようにと人を遠ざけてしまう。

■導入イベント4「東美和の提案」

新聞部の東は川がこうなった原因を突き止めたいと、川の上流を調べに行くことを提案する。
探索者達が同行するならば、それで良し。
しない場合は、東が一人で調べたことを後日探索者達に報告する。

■調査イベント1

  1. 実際に川沿いを歩いて、色が変わっているあたりを調べる
  2. 付近で聞き込みをする(<幸運>と対人技能の組み合わせロール)

1、実際に川沿いを歩いて色が変わっているあたりを調べた場合、川の上流で色が変わっていることに気付く。
その時点で<目星>を行うと、付近に工事現場があることがわかる。

2、聞き込みを行った場合は、上流の工事現場付近で川の色が変わっている気がすると近所のおばさま方が噂しているのを聞きつけます。

■調査イベント2「工事現場」

工事現場に行ってみると、機材は置かれているものの人はいない。
工事もやっていない。
付近の人に話を聞くと、

  • 落盤だか事故だかで怪我人が出たとかで工事中断している
  • 怪我人は近くの病院に運び込まれた

と教えてもらえる。
この段階でどの病院かまで教えて構いません。
そちらに誘導しましょう。

■調査イベント3「名取治」

受付等で話を聞くなら、対人技能で判定を行うか、あるいはロールプレイを促しましょう。
情報を止めても面白くないので、適当なところで工事現場の関係者が入院している部屋を教えてもらえたことにします。

入院していたのは現場監督の名取治。
PC達が自己紹介をするなら、うちの娘もこの春からそちらの学校にお世話になっているという話をしてきます。
この時点で既に名取親子は別居中。
娘に滅多にあえなくなった父親は娘のことを色々聞いてきたり、娘のことをよろしくと探索者達に言ってきます。

現場監督といっても、名取は常に作業員達と一緒にいるわけではない。
会社や外部との連絡もあり、現場を離れることもある。
そんな彼が知っている情報は以下。

  • この現場に着手するようになってから、作業員達の体調不良が続出
  • 急に現場に来なくなってしまった者もいる
  • あの現場は新しく団地を建設予定
  • 地盤が脆く、掘り起こすうちに地面が崩れてしまった
  • 名取は重機の下敷きになり、負傷して病院に運ばれた

作業員達が体調不良を起こしたり来なくなるだけでなく、現場監督まで負傷してしまったということで、現在工事は中断していると教えてくれる。

それ以上聞こうとした時点で、市の職員が事情を聞きに病室を訪れます。
探索者達がこの時点で話を聞けるのはここまで。
工事現場に戻ろうとしても、市の職員が封鎖していて立ち入ることは出来ません。

■調査イベント4「名取家の事情」

名取幸の転校した理由等については、前の学校に連絡を取るか、あるいは名取の両親から話を聞くことが可能です。
ただ、どの場合でも生徒PCが一緒の場合には教えてくれません。
教師PCが単独で調査することになります。
(もし教師がNPCの場合、独自に調べたことを生徒PCに伝えるという形にしましょう)

前の学校に問い合わせを行う場合、教師PCの立場を明かしたならばそのまま家の事情を教えてくれます。
名取の両親に直接聞いた場合、最初は話したがりませんが対人技能に成功したなら事情を教えてくれます。

  • 名取の母親が教師と不倫関係にあると噂になった
  • 学校側は否定しているが、教師は辞職
  • 名取の両親は別居
  • 名取自身もいづらくなり、転校

※この調査イベントについては、流れで調査とはなかなかなりづらい部分です。
名取の話題が出たり、名取の態度にPC達が疑問を持った時点で「調べることも出来る」と提案して調査を促してください。

■中間イベント1「川の異常についての報告」

市から学校側に調査結果の報告が入ります。
川の異常については、以下の通り。

  • 川の異常は、錆の一種と見られる
  • 工事現場近くの土砂に長年堆積していた
  • 工事の影響で土砂が崩れ、川に流れ出したのではないか

当然あの川の異常はそんなものではありませんが、科学的な証明も出来ず、上記のように結論付けています。
実際には血の成分も多く検出されたでしょうが、どうしてそんなものが検出されているかもわからず、犠牲者もいないために、原因不明で調査現場は混乱を極めていることでしょう。
最終的には土砂の中に血液成分も堆積していたのでは、となっています。
市の調査についてはこちらも参照。

~解説~
この川の異常には、6章の「異界」が関係してきます。
6章の異界では時間が混ざり合い、かつての戦国時代、首無し遺体があの場所に多く積まれた時と同じような状態になったこと。
また異界に入り込んでしまった哀れな犠牲者を怨霊達が襲い、その首を刈り取って遺体を放置したこと。
それにより、川に血と怨霊達が使った鎧と刀の錆とが流れ込んでいます。
この時点ではまだ6章のイベントは発生していませんが、6章で地主の死亡推定時刻がズレていたり、最終的に生きた状態で見つかったり等を見てもらえばわかるように、異界と現世の時間はズレています。
これは「川を遡って異界に迷い込む」時に「時間をも遡ってしまう」からと位置づけています。

というわけで、6章に異界で起きた川の異常が、時間が狂い今この時点で検出されています。
この段階ではまだ「不気味な演出の一環」ということでイベント描写しておきましょう。

■中間イベント2「英原の着任」

新任英語教師の英原が着任します。
しかし、着任早々に顔色が悪い。
彼はこの学校に赴任することが決まって、川近くにアパートを借りていた。
そこで川の異臭騒ぎに巻き込まれ、体調不良になっています。

職員会議で挨拶をした後、全校集会でも全校の生徒に紹介される。
榊の受け持っていたクラスをそのまま引き継ぐので、探索者達も彼に教わることになります。

翌日英原による初授業……のはずが、彼は体調不良で欠勤となった。
学校側でも心配して、教師PCに様子を見に行って欲しいと声をかけてきます。
学校側から声をかけられるのは当然教師PC単独ですが、生徒PC達も一緒に行動出来るようならばそう促しましょう。

■中間イベント3「英原のアパート」

アパート近くでは、近所のおばさま方が立ち話をしている。
「ねぇ、うちのお父さん見なかった? 犬の散歩に行ったっきり、帰ってこないんだけど……」

そんな話を小耳に挟みながら、英原のアパートへ。
窓から月下川が見下ろせるくらいの位置。
英原はちゃんと部屋にいて、探索者達に応対してくれる。
病状は身体が重い、頭が痛い、身体の節々が痛いなど。
症状的には風邪のようではありますが、この時点で彼は川から漂う怨霊の思念による悪影響を受けています。
もし誰かが<医学>を使って成功したならば「肉体的にはなんら異常は見られない」と結果を伝えてください。

それ以上の話は特に英原のアパートでは聞けません。
もし探索者達がもっと聞きたそうにしているなら、体調が悪いのでと早々に引き取るよう英原側から切り出すようにしてください。
帰り際、探索者達が川の様子を見ていくならば良し。
もし立ち寄らないようならば、<聞き耳>を振らせてください。
成功した場合、川の方から犬の悲痛な鳴き声が聞こえてきます。

■中間イベント4「犬の石像」

川の土手で<目星>。 成功すると、犬の石像が放置されているのを発見します。
石像とは思えないほどによく出来ていて、怯えたような表情も、細いリードまで全て石で表現されています。
そう、石に彫ったと言われるよりは、犬がそのまま石化したと言われた方が納得出来るほどに。

実際には、散歩中のお父さんが連れていた犬が黒仏によって石化されたものです。

■中間イベント5「榊の訪問」

翌日も榊は欠勤。
生徒達が授業をしている時間に、榊が職員室を訪ねてきます。
後任の教師が決まったということで、彼が生徒達について纏めたノートを届けに来ました。
また、生徒PC達に渡して欲しいと、音田手作りのマドレーヌも預かります。

英原が体調不良で来ていないと知ると、榊は「ひょっとして例の異臭騒ぎでしょうか」と聞いてきます。
もし英原の話題にならないようならば、川近くにある学校は大丈夫だったかと榊側から異臭騒ぎのことについて切り出すように誘導しましょう。
榊からは、弁財天神社の神主が異臭騒ぎについて気にしていたという情報を入手します。

榊が帰った後、入れ違いに貝塚先生が職員室にやってきます。
(1章で出てきた、地学部顧問の先生です)
(既存NPCを使っているだけなので、もし貝塚先生が死亡している場合などには他教師NPCを適当に生やしてください)

貝塚は英原のところに電話をかけたが、繋がらないと言う。
何もなければいいけど……と心配をしています。
この時点で探索者達が英原の様子を見に動くならば良し。
動かないようならば、貝塚から「英原先生の家を知ってますよね、様子を見てきていただけませんか」と持ちかけましょう。

~解説~
榊の訪問自体は「神主が気にしていた」という情報を出すためのものです。
それ以外「ノートを預かる(英原のところに届けに行く口実を作りやすくする)」というのも有りはしますが、こちらは貝塚から直接促せるので、そこまで大きな目的ではありません。
既存NPCを登場させてのちょっとした息抜きみたいな感じです。
音田手作りのマドレーヌを生徒PC達に渡して、彼女が元気にやっていることと、母親になるために色々頑張っていることを演出しましょう。

■中間イベント6「謎のお札」

英原の家を訪ねると、インターホンを鳴らしても誰も出てきません。
かわりに、ドアノブに紙袋が下げられています。
紙袋の中には、一枚のお札が入っています。
<アイデア>で判定し、成功するとそのお札と似たようなものを弁財天の神社で見たことを思い出します。
<知識>か<オカルト>で判定し成功すると、そのお札が大黒天にちなんだものだと気付きます。

英原の家は鍵もかかっていません。
(動画では鍵がかかっていることにしてましたが、こちらの方がスムーズだと思います)
中には誰もおらず、留守電のランプが点灯しています。

留守電を聞くならば、二件録音されています。
一件目は貝塚からの電話。
もう一件は史岡からのものです。(この時点ではまだPC達は彼のことを知りませんが)
内容は以下。

おい、大丈夫か。
少し調べてみたが、大分面倒なことになっていそうだな……。
とりあえずで使えそうな物を持っていったんだが、留守だったようなので玄関に提げておいた。
困ったことがあれば、それを使うといい。
とにかく、これを聞いたらすぐ俺のところまで来てくれ。
わかったな。

これでPC達に、この留守電の主がお札をドアノブに下げておいたのだとわかるでしょう。

■中間イベント7「隣人からの話」

英原の部屋を出ると、隣人が扉を開けて声をかけてきます。
「あれ、お隣さん……大丈夫でした?」
お隣さん曰く、越してきたばかりで少し前に挨拶してくれたお隣さんが、少し前に取り乱した様子で走って部屋から出ていったとのこと。
川の方に向かっていったという情報を入手します。

もし探索者達が英原の部屋に入って探索を行わなかった場合は(史岡からの留守電が聞けるので本来ならば部屋に入ってもらった方が良いのですが、不法侵入等気にすることもあるかと思いますので、無理強いはせずに)扉前に居る時に声をかけられたとしてください。

なお、このお隣さん6章でもまた出てきます。
雑貨屋の店主をしています。今日はたまたま定休日だったのでしょう。

■中間イベント8「英原の受難」

隣人からの話を受けて川に向かうなら、微かなうめき声が聞こえてきます。
声を頼りに英原を探せば、奇妙な様子の英原を発見します。
英原の姿は、まるで色を失ったかのようでした。
彼は黒仏に出会い、石化しかけています。
探索者達に気付き、英原が声をかけてきようとしますが、その動きもぎこちない。
石化しかけの英原が、必死に探索者達に逃げるようにと伝えてきます。

石になりかけの英原を見て、まずは0/1d4の正気度ロール。

彼は固まりつつある指を必死に持ち上げて、探索者達の後方を指さそうとします。
背後を振り返るなら、黒仏と遭遇します。
もし振り返らない場合、黒仏からの奇襲状態となります。
以下、遭遇時の描写例。

振り返ると、そこには異形の影があった。

君達はこれに似た物を見たことがある。
しかし、こんな場所ではない。
寺院だったり、あるいは写真やパンフレットなど、ちゃんとした場所で安置されたものだ。

これは違う。
外見だけならばまるで仏像のように見えるが、その身体は深い闇を纏ったかのように、黒く淀んでいる。

宙を漂い、真っ直ぐに君達の方へと向かってくる。
その姿に気付いた瞬間、英原のうめき声が悲鳴に変わった。

黒仏と遭遇した探索者達は正気度ロールが発生します。
このまま、黒仏との戦闘に入ります。
英原は石化して動けず。
黒仏は戦闘で倒すのは難しい相手です。
そのまま普通に戦ってもなかなか勝ち目が無さそうなことを匂わせて、逃走あるいは別の方法を考えるように促しましょう。

ここでの正解は「ドアノブにかけられていたお札を使う」ことです。
それにより黒仏に姿を変えられた者が元の姿に戻ることが出来ます。
もし探索者達がお札の存在に意識を向けないならば<アイデア>を振らせても構いません。
その場合、黒仏の姿が黒く恐ろしいながらも仏像のようにも見えることを伝え、ひょっとしたらこのお札が使えるのではないかと匂わせましょう。

お札を使った後は、黒仏は一人の男性の姿へと変化します。
倒れた男性は意識こそ無いものの、安定した様子。
ポケットからは財布が見つかります。
顔写真入りの名刺も入っていて、男性の身元が名取治と同じ建設会社に勤める社員であると判明します。

黒仏が消えたことで、英原の石化進行は止まります。
ただ、元に戻ったわけではありません。石になりかけの状態です。

現状では片や意識不明、片や石になりかけでまともに話が出来る状態ではありませんので、病院に運ぶなりどこかで休ませるなりして、改めて話を聞くようにしましょう。

※セッション動画化にあたり、パンダ=ヒロさんに黒仏を描いていただきました。
フリー素材として公開していただいてますので、セッションの際にもイメージ画像としてご利用いただけます。
パンダ=ヒロさん、本当にありがとうございます!
素材を借りる際には利用規約をよく読み、先方にご迷惑をかけないようにお願いします。

 → 黒仏のイラストはこちら

■中間イベント9「英原の話」

落ち着いたところで、英原から話を聞けるようになります。
ただいまだ石化は収まらず、話す様子もたどたどしいものです。
かろうじて聞き取れた内容が以下。

最初はあの臭いに当てられたというか……
気持ち悪くなって、むかむかしたり、頭が痛くなったり……
そんなような感じだったんですが……。
次第に、声が聞こえるようになってきたんです……。

最初は念仏かお経か何かと思ったんですが、それにしては妙に禍々しくて……まるで、呪詛のような……。

聞いているうちに、頭がおかしくなりそうで……
自分までもが、その禍々しさに囚われてしまいそうになって……
たまらず、友人に相談したんです……。

その友人、郷土史について詳しいんです。
あの工事現場のことについても、色々調べてくれると言って……
その結果を待とうとも思ったんですが……。

あの声が、あまりに大きくなってきて……
気付いたら、家を飛び出ていたんです。
そして、あの化け物に襲われて……。

友人についての情報は、史岡の項目を参照。
ただ、この時点では「郷土史の研究家」であると紹介し、名取との関係は公にしない方が進行上良いと思います。
英原はこのまま暫く治療に専念することになります。

■中間イベント10「現場作業員の話」

黒仏から元に戻った現場作業員は、名取治と同じ病院に入院することになります。
そこが作業現場からも近く、また会社側も顔が利くのでしょう。(ということにしておいてください。シナリオの都合です)
現場作業員は上とのやりとりに急がしい現場監督以上に現場に詰めているため、現場のことには一番詳しい人物と言えます。
そんな作業員の話が以下。

やっぱり、罰が当たったんですかね……。
あの場所、元々は小高い丘になってまして。
雑草も生い茂ってて、誰も手入れしていないような状態でした。
そんなところだったから……すぐに重機を入れてしまったんですよ。

古い木造の建物があったのには、気付いてました。
ですが、上からも何も言われなかったし、何よりかなりボロいものだったので……。

取り壊した後、中から古い像が出てきました。

何の像かまではわかりません。
手入れもされていなさそうな、凄く古い物だったんで、そのまま機械で掘り進めていったんですが……。

その直後に、地面が崩れてしまったんです。

彼が話してくれるのは、ここまで。
崩落等があって、掘り起こした像がどうなったかはわからない。
おそらく現場に埋もれているのではないかと教えてくれます。
崩落現場についても、それ以降は工事中断しているため地下がどうなっているかはわからないと教えてくれます。

※一応市の職員が調査に行ったはずですがそこを踏まえると少し面倒なので、市の調査に関しては「現場の調査は危険であまり出来なかった」「崩落しそうな場所にはあまり立ち入らず、川の成分分析をメインに行っていた」とでもしておきましょう。

■中間イベント11「名取親子」

現場作業員から話を聞くために病院に行った際に、父親の病室を見舞う名取幸を見かけます。
名取は「お父さんが入院したって、会社の人が教えてくれた」と父親に話して病室を訪れます。
探索者達との会話は発生させてもさせなくても、どちらでも構いません。

このイベント自体は今時点では大きな意味を持ちません。
彼女が父親の元を訪れたということが、次章への伏線となります。
(この段階で、彼女は父親から金を渡されています)

■調査イベント5「神社」

この時点で神社に話を聞きに行こうとすると、留守を預かる人に「神主は不在」「最近気になることがあるらしくて、よく出かけている」と言われます。
後々で登場させるようにしましょう。

神社に来るなら、お札を追加で貰うことは出来ます。
弁財天の神社ですが、弁財天祈願、毘沙門天祈願、大黒天祈願と揃っています。
弁財天と毘沙門天のお札が効くかどうかは……一応三面大黒天は大黒天、毘沙門天、弁財天の三つの顔があると言われてますので、効いても効かなくてもどちらでも構いません。
KPのさじ加減でどうぞ。

■調査イベント6「川の上流」

工事現場に向かう途中か、あるいは川の様子を見に行ったならば、工事現場近くの川土手で男性の石像を発見します。
その表情は鬼気迫るもので、何かから逃れようとしているようにも見えます。
ただの石像と放置するならばともかく、それを黒仏の犠牲者と関連付けて考えてしまうならば、0/1d3の正気度ロールが発生します。

なおこの男性が犬の散歩に出ていた人という設定です。

■調査イベント7「工事現場」

市の調査も終わり、立ち入り禁止のロープは張られてはいるものの、見張りなどはいない状態。
工事現場を調べに入るなら、このままクライマックスに突入します。

■クライマックス

パッと見で像は見つからないが、重機の近くに地面が崩れた場所がある。
工事中断の後、雨により地面が脆くなっていた。
探索者達が近づくと、足下が崩れてしまう。

全員、DEXの5倍で判定。
失敗すると足下が崩れ、そのまま地下へと落下してしまう。
崩落に巻き込まれた探索者がいた場合は、1d6の落下ダメージが発生します。(<跳躍>で軽減可能)

誰も落ちなかった場合、崩れ落ちたその下に丸みを帯びた木の像があるのを発見出来ます。 工事現場につきすぐ近くにプレハブ小屋があり、その中にはロープ他必要そうな道具は一通り確保出来ます。
誰も落ちなかった場合には、それらの道具を使うよう誘導してください。

地下は広い空洞になっています。
そして、穴の床部分は一面白い物で埋め尽くされています。
穴の中に下りた探索者は、すぐにそれが白骨であると気付くでしょう。
自分達が白骨の絨毯の上に立っていると気付いた探索者は、0/1d3の正気度ロールが発生します。

白骨を調べるのなら、骨はどれもかなり古そうだということと、広い空間を埋め尽くすほどに散らばっているのに、その中で頭蓋骨は一つもないことに気がつきます。
胴体部分の骨が無数に散らばっていて、その中に木彫りの三面大黒天の像が落ちています。

~三面大黒天とは?~
大黒天、毘沙門天、弁財天三神の合体像。
三面六臂のマハーカーラを元にして作られたと言われている。

洞穴内は広く、また地上の明かりが届かない場所は暗く先が見通せないような状態。
その暗がりから、なにかの気配が近づいてきます。
<目星>に成功すれば、暗がりの向こうに何体もの黒仏がいてこちらに向かっているのがわかります。

この時点ではまだ地下の探索を念入りにされたくはないので、このまま探索者達に地上に戻るよう誘導しましょう。
下りる時にロープを使っていたり、落下せずに誰かが地上に残っている場合は、ロープを使って地上に戻ることが出来ます。
もし全員落下していた場合は、<登攀>判定を行いましょう。
全員<登攀>初期値の場合、<幸運>と<目星>の組み合わせロールに成功したら掴みやすい場所を見つけられたとしてボーナスを与えても構いません。
迫り来る黒仏が何ラウンドで到着するかダイスを振って決定し、<登攀>チャレンジは1ラウンドに1回とすると、スリルが出ると思います。
もし誰か一人でも成功して登れたならば、地上から引き上げるなりロープを持ってくるなりでその後残った人達を救出できる流れに持っていきましょう。

全員が地上に戻ったところで、弁財天神社の神主が声をかけてきます。
彼はこの場所に三面大黒天を祀った社があったことを知っていました。
工事によって社が壊されてしまったことを知り、現場を調べに来たのです。
探索者達が三面大黒天の像を無事に回収出来ていたならば、その社の御神体である三面大黒天像は彼が預かり、一時的に弁財天の神社に安置してくれます。

最初の章は、とりあえずはここまで。
三面大黒天についてやお札のことは、神主の口を借りて探索者達に説明を行うことも出来ます。
この時点では「信仰をおろそかにしたことで、三面大黒天が祟って出たのではないか」等の憶測が出ると思いますが、どちらにせよ御神体でもある三面大黒天像を神主に祀ってもらい、黒仏を鎮めることにしましょう。

探索者達をねぎらい、生存を祝って1d6~1d10のSAN報酬を与えてください。

■おまけ

Q,あのお札結局なんだったの?
A,大黒天の真言が書かれたお札です。
弁財天の神社で扱っています。
史岡が「あの工事現場は三面大黒天の社があった場所!」と気付き、神社で求めて英原の家に届けました。
ちなみに「 唵摩訶伽羅耶娑婆訶 おんまかきゃらやそわか 」と書かれているそうです。

詳しく知りたい方は参考文献にある「三面大黒天信仰」を是非ご一読ください。

傍目には「お札を使って三面大黒天の怒りを鎮めた」と見えるかもしれませんが、その実態は社を壊されて悪心影の封印が弱まりその影響が漏れ出たところを、大黒天の札を使って影響力を取り戻したという形です。

Q,見つかっていない作業員達は?
A,彼等は地下の黒仏と化しているか、あるいは異界に迷い込んでいます。
6章まで全て終わらせ、暗黒影の影響から解き放たれたならば、無事に元通りに戻れるかもしれません。
今はまだ、彼等の安否はわからないままです。

Q,お札を大量に持っていって、黒仏倒し歩いてもいい?
A,別に構わないけど、危険は大きいです。
黒仏の1体が現場作業員だったことを受け、探索者達が黒仏を解放することを望むならば、それも良いでしょう。
黒仏はサプリメント比叡山炎上に登場する神話生物であり、通常の舞台向けの神話生物ではありません。
戦闘能力はかなり高く、対処するのは大変です。
その点だけ配慮してあげてください。

Q,4章のうちに地下を完全制覇して、祭壇まで発見しちゃった!
A,この場合は仕方ない、5章をまるっとスキップしましょう。
史岡は既に英原から連絡を受けて調査を開始していますので、祭壇には既に史岡の手が入っている。
名取親子のイベントは発生せず、という状態になります。
そのまま6章へお進みください。
仕方ないね……。
5章で出てくる内容は、エピローグと6章とで散りばめてください。

いや、黒仏をどうにかしようとする現代探索者とかちょっとパワフル過ぎて、本当にそうなり得るのかはわかりませんが。
死なないように頑張れ。

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第5章

第6章

参考文献
三面大黒天信仰 新装版
著:三浦あかね様、発行:雄山閣様

Special Thanks
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